CONTENT コンテンツ

2022年度、労基署による不払い残業代の是正指導が約65億円にのぼる!

昨今の働き方改革の推進などに伴い、世間的に労務意識の高まりから、企業はますます多くの労務リスクに直面することとなっています。

そこで毎年問題にあがるのが未払い残業代です。

残業代が従業員に対して適切に支払われていなかった場合、もしくは支払うべき額が正確に計算されていなかった場合は後から請求されるだけでなく、遅延利息や付加金のリスクも生じてきます。

この度の記事では未払い残業代の概要やリスク、未払い残業代が発生しないための適切な労務管理などについてお伝えします。

未払い残業代とは?

まず、未払い残業代とは何かといいますと、支払い義務があるにもかかわらず、従業員に対して適切に支払いがなされていない残業代のことです。

労働基準法32条では、法定労働時間として1日8時間、1週間で40時間を定めています。

この法定労働時間を超えたものは残業の扱いとなり、最低1.25倍の給与を残業代として支払う必要があります。

未払い残業代がどうして発生してしまうのか

そこでどういった場合にこの未払い残業代が発生するのかと言えば、会社が従業員の労働時間を適切に管理できていないことが主な要因です。

普段からタイムカードや勤怠システム従業員の労働時間を管理していても、始業時間前や終業時間後に、パソコンの使用記録が残されていた場合もあるのではないでしょうか。

賃金不払残業の疑いが認められたため、労基署が始業・終業時間とパソコンの使用記録との乖離の原因究明や不払となっている割増賃金の有無について調査を行い、不払が生じている場合には割増賃金を支払うよう指導することがあります。

未払い残業代の実態について

先日、厚生労働省が「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」を公表しました。

これは全国の労働基準監督署が賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、2021年4月から2022年3月までに不払いになっていた割増賃金が支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

その結果と実際の監督指導の事例は以下のとおりです。

是正企業数等の概況
 是正企業数:1,069企業(前年度比7企業の増)
 対象労働者数:64,968人(同427人の減)
 支払われた割増賃金の合計額:65億781万円(同4億7,833万円の減)
 支払われた割増賃金の平均額:1企業当たり609万円、労働者1人当たり10万円

今回、支払われた割増賃金の合計額は前年よりも減少しましたが、依然として不払い残業が少なくないことがわかります。

未払い残業代のリスク

続いて、未払い残業代が発覚した場合、企業にどのようなリスクがあるのか解説します。

1.懲役または罰金のリスク

仮にですが、労働者が労基署に駆け込んだとします。最悪の場合は労働基準監督署による逮捕や送検が行われ、労働基準法違反として懲役や罰金など刑事罰の対象となり、残業代の未払いにおいては30万円以下の罰金もしくは6か月以下の懲役が課されることがあります。

2.未払い残業代の支払いと遅延利息

従業員が未払い残業代に関して裁判を行った場合、残業代のみでなく遅延利息の支払いを求められることがあります。また退職後の未払い残業代の請求権においては年14.6%の遅延利息が発生します。

3.付加金

労働基準法の114条において定められた付加金ですが、未払い残業代と同額の付加金を労働者に対して上乗せして支払うよう求められることがあります。

例えば200万円の未払い残業代があった場合、200万円の付加金を上乗せし、合計400万円を労働者に支払う必要が生じます。

未払い残業代のリスクを発生させないためにできること

未払い残業代の抱える金銭的なリスクについて説明をしてきましたが、本来の額に対してはるかに大きな額を支払うケースもあり、問題の重要性は認識いただけたかと思います。

そして、企業に対しても悪い印象を与えてしまうことにもなるでしょう。こちらこそ金銭的なリスク以上にシビアな問題となるかもしれません。

しかし、適切に残業代が支払われているのであればそれらのリスクは回避することが可能です。

リスク回避のポイント~適切な労働時間把握

残業代は労働時間の超過分に対して支払うものなので、従業員の労働時間を適切に把握する仕組み作りが必要です。

最近では働き方改革推進と高まる労務リスクに伴い、多くの企業が勤怠管理システムを導入し始めているようです。

そういったシステムの導入も大事なことですが、何よりもまずは普段から従業員に対して、労働時間が法定内で収まるような指導・教育をしたり、長時間労働を是としない企業風土づくりをすることも大事なことかと思います。

その上で、適切な労働時間の管理を行うことで、労務におけるリスクを回避し、企業の安全な経営にも役立つこととなります。

また、事業主の方たちの中には、何から手を付けていいのかわからない、既に未払い残業代が発生しているどうしていいかわからない、という方もいらっしゃることかと思います。

そんな時はぜひ一人で悩まずに、社労士に声をかけてみてください。きっと力になれるかと思います。

参考URLはコチラ