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最低賃金が変わりますのでご注意ください!

毎年、この時期(10月1日)になりますと、最低賃金が変わります。

この最低賃金ですが、正社員の方だけではなく、パート・アルバイトで働く方にも適用されるために、事業主の方には注意していただきたい点が多々あります。

今回はこの最低賃金について、解説してゆきたいと思います。

低賃金額とは

まず最低賃金とは何かということですが、これは1時間あたりの金額で定められます。(最低賃金法第3条)

例えば、「1時間○○円」のように定められています。

この最低賃金は、全国各地域について決定され、各都道府県ごとにその額が異なります。これを地域別最低賃金といいます。

ちなみにですが、私が暮らす愛知県ではこの10月1日から、986円となります。これは昨年よりも31円アップしています。

そして、どの都道府県の最低賃金が適用されるかは、労働者の住んでいる場所ではなく、事業場の所在地によって決まります。

例えば、A県に住む労働者がB県の事業場で働いている場合、B県の最低賃金が適用されことになります。

なお、地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、また正社員、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。

もう一つ、最低賃金は地域別最低賃金のほか、関係労使の任意の申出により、同一の都道府県内の特定の産業について定めることもできます。特定の産業について定める最低賃金ということで、これを特定最低賃金といいます。

例えば、特定の産業として、北海道では「乳製品」「鉄鋼業」などが、愛知県では、「自動車小売業」などが、沖縄県では、「糖類製造業」などが定められており、この特定の産業に従事する労働者に対して特定最低賃金が適用されます。

この特定最低賃金の額は、当該特定最低賃金の適用を受ける使用者の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金の額を上回るもでなければならないとされています。(最低賃金法第16条)

そして、最低賃金法第6条で、「二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、最低賃金額のうち最高のものが適用される」と規定していため、特定最低賃金が地域別最低賃金に優先して適用されることになります。

また、派遣労働者・出向労働者の最低賃金については、派遣先の事業場において適用されている地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます。(最低賃金法第13条、第18条)

出向労働者についても同様に、出向先の事業場において適用されている地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます。

最低賃金額が変更される時期

最低賃金は、毎年10月頃に変更されます。

地域別最低賃金については、変更がある年がほとんどですが、特定最低賃金については、変更ない年もあります。

注意しないといけないのは、各都道府県によって、変更の効力発生時期が違うということです。

例えば、A県の地域別最低賃金は10月1日から、B 県の地域別最低賃金は10月6日から変更する、などです。

最低賃金の減額の特例

下記の労働者の最低賃金額は、一定の減額率によって減額した額にすることができます。

① 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
② 試の使用期間中の者
③ 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定のもの
④ イ 軽易な業務に従事する者 ロ 断続的労働に従事する者

です。

減額特例の許可を受けようとする使用者は、所轄の労働基準監督署に申請書を提出し、許可していただく必要があります。

ただし、この減額の特例については、経営状況により仕方がないなどの場合を除き、この減額の許可申請はあまりお勧めしていません。

最低賃金額の効力

(1)最低賃金を下回る賃金

最低賃金額に達しない賃金を定めている労働契約は、その賃金の定めについては無効となります。(最低賃金法第4条)

ただし、労働契約が全体が無効となるわけではなく、無効となった賃金の定めについては、最低賃金と同額の定めをしたものとして扱われます。

これにより、以前から違反状態が続いている会社では、最低賃金額との差額を遡って支給する必要がありますので注意してください。

(2)最低賃金の対象から除く賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であり、下記の賃金は最低賃金の計算の基礎からは除外されます。

①臨時に支払われる賃金
②1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
③割増賃金
④精皆勤手当
⑤通勤手当
⑥家族手当

これらの賃金の額を除いた額が最低賃金以上になるようにしてください。

(3)最低賃金を下回る場合の罰則

最低賃金を下回る賃金しか支払っていない使用者には、下記の罰金が科せられますのでこちらも注意していただきたいところです。

「地域別最低賃金」の不払いは、50万円以下の罰金が科せられます。(最低賃金法第40条)

「特定最低賃金」の不払いについては、労働基準法第24条に規定する全額払いに違反し、30万円以下の罰金が科せられます。(労働基準法第120条)

最後に

以上、最低賃金について解説してきましたが、貴社は、最低賃金を下回っていないか、毎年夏頃にでも確認していただきたいと思います。

上にも書きましたが、最低賃金は雇用する労働者すべてに適用されます。

アルバイトの高校生であったり、外国人労働者で時折、最低賃金以下で働かせている事業所が問題になることもあります。

もし最低賃金を下回っている場合は、直ちに最低賃金額以上に改め、また違反していた部分の差額を遡って支給しましょう。

そして、この先、最低賃金は上がることはあっても下がることはないといえます。

また、賃金は、労働者の勤労意欲に直結する事項です。

長年働いているにもかかわらず、賃金が最低賃金のままの労働者は、本来の力を発揮できていないかもしれません。

最低賃金を下回っていないから大丈夫とは思わず、自社で働く従業員のためにも賃上げを検討してみることをお勧めします。